東京地方裁判所 平成5年(特わ)6号 判決 1993年5月21日
本籍
金沢市寺中町イ一七番地一
住居
東京都中野区若宮三丁目五番四号
会社役員
戸水泰治
昭和二九年一二月三日生
主文
被告人を懲役一年八か月及び罰金六〇〇〇万円に処する。
この罰金を全額納めることができないときは、三〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判の確定した日から四年間懲役刑の執行を猶予する。
理由
(犯罪事実)
被告人は、東京都新宿区歌舞伎町二丁目二一番六号にあるハタノビル五階外九か所において、「スナック・エルム」等の名称で飲食店を営んでいたものである。被告人は、自分の所得税を免れようと考え、売上げの一部を除外したうえ、右の各店の従業員等がそれぞれの経営者であるかのように装って、同人らの名義で所得税の確定申告をするなどの方法により所得を隠して、
第一 昭和六二年分の実際の総所得金額が一億一九三二万九九八一円であった(別紙1修正貸借対照表参照)のに、昭和六三年三月一六日、同都中野区中野四丁目九番一五号にある所轄の中野税務署において、税務署長に対し、昭和六二年分の総所得金額が一一〇五万二〇〇〇円で、これに対する所得税額が一八四万〇六〇〇円であるという虚偽の内容の所得税確定申告書を提出した。そして、そのまま法定の納期限を経過させた結果、同年分の正規の所得税額六二七六万三五〇〇円と右の申告税額との差額六〇九二万二九〇〇円(別紙4脱税額計算書(1)参照)を免れた。
第二 昭和六三年分の実際の総所得金額が一億二二八〇万八二二六円であった(別紙2修正貸借対照表参照)のに、平成元年三月一六日、中野税務署において、税務署長に対し、昭和六三年分の総所得金額が一〇〇四万一三〇〇円で、これに対する所得税額が一二九万〇九〇〇円であるという虚偽の内容の所得税確定申告書を提出した。そして、そのまま法定の納期限を経過させた結果、同年分の正規の所得税額六三〇〇万五八〇〇円と右の申告税額との差額六一七一万四九〇〇円(別紙4脱税額計算書(2)参照)を免れた。
第三 平成元年分の実際の総所得金額が二億二五五六万二〇二八円であった(別紙3修正貸借対照表参照)のに、平成二年三月二二日、中野税務署において、税務署長に対し、平成元年分の総所得金額が一四四五万八五三四円で、これに対する所得税額が二四三万一七〇〇円であるという虚偽の内容の所得税確定申告書を提出した。そして、そのまま法定の納期限を経過させた結果、同年分の正規の所得税額一億〇七〇八万〇九〇〇円と右の申告税額との差額一億〇四六四万九二〇〇円(別紙4脱税額計算書(3)参照)を免れ
た。
(証拠)
(注)括弧内の算用数字は、押収番号を除き、証拠等関係カード検察官請求分の請求番号を示す。
全事実について
1 被告人の
<1> 公判供述
<2> 検察官調書一四通
2 丹後勝太郎、戸水明子、斉藤智子、柳井寛、上沼清近、井村實、廣瀬高太郎、吉田修の検察官調書
3 定期積金調査書、その他の預金調査書、割引債券調査書、有価証券調査書、過払税金調査書、保証金・敷金調査書、車両調査書、土地・建物調査書、事業主貸勘定調査書、未払金調査書、預り金調査書、借入金調査書、事業主借勘定調査書、申告所得調査書、不動産所得調査書、「不動産所得」収入調査書、「不動産所得」修繕費調査書、「不動産所得」減価償却調査書、「不動産所得」地代家賃調査書、「不動産所得」雑費調査書
4 捜査報告書八通(甲19、24、35ないし37、51ないし53)
第一の事実について
5 前渡金調査書
6 捜査報告書二通(甲17、28)
7 所得税確定申告書等一袋(平成五年押第二二六号の1)
第二の事実について
前記5の証拠
8 現金調査書、定期預金調査書、売掛金調査書、棚卸資産調査書
9 捜査報告書(甲7)
10 所得税確定申告書等一袋(同号の2)
第三の事実について
前記8、9の証拠
11 器具備品調査書、「不動産所得」青色申告控除調査書、給与所得調査書
12 捜査報告書(甲23)
13 所得税確定申告書等一袋(同号の3)
(法令の適用)
罰条
いずれも所得税法二三八条一項、二項(情状による)
刑種の選択
いずれも懲役刑と罰金刑を併科
併合罪の処理
刑法四五条前段
懲役刑について刑法四七条本文、一〇条(犯情の最も重い第三の罪の刑に加重)
罰金刑について刑法四八条二項(各罪の罰金額を合算)
労役場留置
刑法一八条
刑の執行猶予
懲役刑について刑法二五条一項(出席した検察官渡邉清、弁護人葛西宏安)
(裁判官 朝山芳史)
別紙1
修正貸借対照表
<省略>
別紙2
修正貸借対照表
<省略>
別紙3
修正貸借対照表
<省略>
別紙4
脱税額計算書
(1) 昭和62年分
<省略>
(2) 昭和63年分
<省略>
別紙5
脱税額計算書
<省略>